
以下は、ダークベルベット系アンスリウムの代表格として広く知られる Anthurium ‘Ace of Spades’(通称:AOS)についての品種紹介です。
本種は「スペードのエース」という名の通り、黒みを帯びたベルベット質の葉と重厚な存在感から、長年にわたり多くの愛好家を魅了してきました。
その背景には、南米産の種子を起点とし、アメリカ・フロリダのナーセリーを中心に流通が始まった歴史があり、現在も国内外で数々のクローンや系統が派生しています。ここでは、その起源や流通の経緯、そして海外栽培家の記録を交えながら、AOSの魅力と特徴を整理します。

Photo by Urban Jungle
基本情報と原産地
- 名称:Anthurium ‘Ace of Spades’ 流通ラベル表記:Ace of Spades, AOS, AOS (Dark Form)など
- 起源:アメリカ・フロリダ州 Silver Krome Gardens(SKG) にて選抜・命名
- 命名者:Dennis Rotolante(Fennell 家から受け継いだ株群より命名)
由来の逸話
本種の起源は、南米で採集されたアンスリウムの種子にさかのぼります。
Fennell 家(The Orchid Jungle)の温室で “Hoffmannii” とラベルされた株から得られた種子を Dennis Rotolante(Silver Krome Gardens)が播き、その実生群の中で特に印象的な個体が「Ace of Spades」として選抜・命名されました。
1992年のハリケーン・アンドリューにより母株含めアマゾン由来の様々な失われたものの、当時避難させていた AOS 本株は無事であり、以後はその増殖株や実生を通じて今日まで流通が継続しています。

Photo by Urban Jungle

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参考: https://happiestplants.com/blogs/news/anthurium-ace-of-spades-preserving-legacy?srsltid=AfmBOoqbJ_5vGNJFRAl6FiaCbNWTIjfk_9d5gKgaWLxnjdeQLdmEKUrD&utm_source=chatgpt.com
クローンと流通株
本家 SKG の起源
- “Ace of Spades” は、Hoffmannii ラベル株の種子実生群から選抜された特定個体。
- つまりオリジナルも「種子由来」ではあるが、起点が明確で、SKG 内で管理されていた系統から生まれた固有の選抜株。
Dark Form(DF)
- AOS の中でも特に漆黒に近い表現を示す個体群。
- Tezula Plants によれば、自家受粉実生群から 5%未満 しか現れない稀少表現。
- Tezula は「Tezula Dark Form」という商品名を使わず、あくまで Ace of Spades の中から Dark Form を厳選している。


南米実生系やインドネシア苗の混乱
- 近年、ペルーやエクアドルから輸入された 野生採取種子由来の株 やインドネシアで似ているということでリネームされたものが「Ace of Spades」として流通。
- 表現に幅があり、黒みの強い個体もあるが、本家 SKG 選抜とは遺伝的背景が異なる。
- 海外では “Peru AOS”“Ecuador AOS” "Indonesia AOS"と呼ばれることもあるが、便宜的なラベル使用にすぎない。
TC(組織培養)の試み
一部でオリジナル系譜からのTCが試みられたが、汚染や形質安定性の問題で中止。わずかに流通した時期はあるが、現在は希少。
価格と流通
TCも中止されていたということもあり2020年代の植物ブームで価格は急騰。
特に Dark Form は数十万円〜数千ドルで取引されることもある。
栽培のポイント
- 光:明るい間接光を好む。直射日光は葉焼けを起こしやすい。
- 温度:25℃前後を好み、低温(15℃以下)は避ける。
- 湿度:50〜60%でも育つが、高湿度(70%前後)が理想。
- 培地:排水性と保水性を両立したミックス(acu'sでは、ねこチップで問題なく生育)。
- 成長速度:やや遅め。葉サイズが大きいため、根の健全な発達が必須。
交配素材としての魅力


- 優れた葉質と深い色合いを後代に伝えやすい。
- 特に相手を選ばないくらいの個性ではありますが、ダークベルベット系との交配は、重厚なベルベット表現を補強。
- 一方で、葉形は個体差が大きく出るため、スペード形を安定的に残すのは容易ではない。
- Dark Form 表現は劣性あるいは多因子性と推測され、大規模実生の中から選抜が必要。


おわりに
『Ace of Spades』は、アンスリウムの世界で “黒”を象徴する品種 として位置づけられています。その始まりは、Silver Krome Gardens が Hoffmannii ラベル株の実生群から選抜した一点もの。その姿を受け継いだ株が「Ace of Spades」という名を守り続けています。
一方で近年は、南米由来の実生株やインドネシアでオリジナル由来でないものが同じ名で流通し、混乱を生んでいます。だからこそ、オリジナル系統の歴史と正統性を理解することが、この品種を正しく評価するために欠かせません。
『'Ace of Spades'』──それは単なる美しいハイブリッドではなく、歴史・選抜・希少性が重なり合って生まれた“黒の象徴” なのです。
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